全機前進後
 
(2002.2.5)

妙なタイトルですが、何のことはなくFM第一作の最後のセリフ「全機前進」の後、のこと。キャニオンクロウがゲンツの加入で、ハフマン魂と同質の民間部隊としてPMOと戦っていく……というエンディングですが、彼らにハフマン島に対する大国の干渉をはねのけるだけの力があるのかちょっと考えてみる。

第二次ハフマン紛争終結直後、ハフマン島民のみならず全世界の人々は、メタルワーカープロジェクトや紛争に隠された謀略を知ることもなかったので、ハフマン島が紛争から開放され、PMOの管理下に置かれたことを歓迎し、好意的に受けとったはずである。もし、そこへキャニオンクロウがゲリラ的に平和調停軍を襲撃しようものなら、市民から過激派と認識され、かなりの非難を浴びることになる。すなわち、この段階で“本当の”紛争終結を武力で達成するのは無理で、これを成功させるにはペンの力――真実を明らかにし、それをマスコミを通じて広く伝える――を用いなければならず、終結から8ヶ月先のデイリーフリーダム紙がその初の報道となるのである。

FM3の世界、20年後の2112年では、USNがフォートモーナスに海軍基地を擁していることを加味しても、ハフマン島が至った状況はさまざまな考えが成り立つが、可能性が高い例を2つ挙げる。ひとつは、ハフマン島は主権を得、国家として独立しつつも、在日米軍のようにUSN軍が駐留しているというもの。もうひとつは、メール河付近にあった第二次紛争以前の旧国境を再び採用し、分割統治しているというものである。

ここで考えたいのは「ハフマン島民感情」で、USNやOCUなど関係国家への不信が高まったところで、地理的に見てハフマン入植者のほとんどはOCU・USNからの流入であろうし、全島がどちらか一方に支配されるならともかく、市民が民族主義ナショナリズムをもって「独立国家」を主張することは考えにくい。

以上を要約すれば、キャニオンクロウのPMOに対する攻撃は、国家と企業の非人間的な謀略からハフマン島を開放するという“真実に基づいた大義”によって正当性を保てるが、なにも知らぬ市民は、キャニオンクロウをテロ組織と認識する。そして、大国を窮地に追い込むのはフレデリックのペンの力であり、それより前にキャニオンクロウがPMOと奮戦したところで称えられることはないし、島民に独立の意志は芽生えにくいことから、ハフマン島は現状のまま、大国に領有されているとするのが妥当であるといえる。

では、どういった形で領有されるだろうか? USNは連邦制のようなので、いうなれば“ハフマン州”としてUSNに組み込まれるだろう。しかし、OCUでは、国家がOCUに加盟する形態であるので、OCUの領土とするにはどこかの国の領土となることが条件となる。どこの国に属させるかで、OCU内に新たな不和を生じさせることが強く懸念されれば、OCUの領有する西半分を新興国家として独立させて加盟させるかもしれない。無理に一つの国として束ねれればキプロス島の二の舞になる可能性もないわけでないので、国にはその領有を認めつつ、暮らす者には分割を意識させないというやりかたができればよいだろうか。具体的には、島の資源を最大限に活用するため、全島で人・もの・金の流通が滞りなく行える体制をつくり、維持することが重要で、通貨統一、税関なし、パスポート不要(そのかわり、USN本国からの入島であっても提示義務)などの特別措置とったりするか、リヒテンシュタイン、カンピオーネみたいなのもよいかもしれない。

ただし、両国は分割統治の危険因子としてハフマン州内のOCU出身者とOCUハフマン内のUSN人の社会不和の原因となる政治的活動を監視しなければならない。

後の世では「ハフマンの英雄ロイド・クライブ」と名が知られるわけだが、彼に汚名がないのであれば、活躍は紛争の中だけで、「全機発進後」に歴史に残るような成果は挙げていないのであろう。

さて、ロングリバース島はどっちのものになるだろうか?