出て来い!レイブン中隊!!
 
(2004.7.2)

2ndで「4機製造、1機現存」とされ、後の1st・USNサイドで3機登場したことにより「レイブンは何機あるのか」「4機ではなかったのか」「設定を無視してるのでは」という問題が噴出した。レイブンについて統括的に説明した公式資料はないので、ここでは2ndのネットワークで見ることのできるファイアバレーとサカタのレイブンのページを重視して考えてみる。

結論からいえば全8機。下の図はその考察をまとめた概略図。文章が少々ややこしいので、必要の応じて理解の助けにして頂きたい。
 
 
重要資料・論拠となる2ndのネットワークでは以下のように書かれている。

ファイアバレー(要旨)
「第2次ハフマン紛争直前にサカタインダストリィとドミトーリによって開発。試作機が4機生産されたといわれているが、そのうち3機は第2次ハフマン紛争中に破壊されたことが確認されている。最後に残った1機は、USNによって回収されファイアバレーの研究所に預けられていた。現在レイブンは何者かの手により研究所から盗まれ行方不明である」

サカタインダストリィ(要旨)
4機のうち3機は、戦闘・試験中の事故により失われたといわれていたが、OCUは2099年にUSNがレイブン1機を所持しているとの情報を得ている。このレイブンには外部武装及びBDシリーズコンピューターは装備されていない

ケビン編・最終ミッションのレイブン3機はファイアバレーやサカタがいう「破壊された/失われた3体の試作機」ではない。なぜなら、ファイアバレーでは「第2次ハフマン紛争中に破壊」としているからである(読解が厳密すぎるかもしれないが、そうでもしないと話が進まないので、ここは割り切って進める)。実際、情報部のパトリシアが拘留中のケビンに面会をしたのは停戦後のことであるので、サンタバーバラでレイブンと対峙したときもすでに紛争は終わっている。よって、ファイアバレーが確認している3機は紛争後に破壊されたゲイルらのものとは別ものであるから、少なく見積もっても紛争中に破壊された3機と、紛争後に破壊された3機、合計6機が製造されていることになる。

この6機のうちどれか、あるいは複数機がドリスコル搭乗のレイブンとして、ラーカスやグレイロックに現れたのだろうが、論拠となるものがないので、それらが試作機なのかゲイルらの機なのか特定は不可能と思われる。意外に思われるかもしれないが、1stOCUサイドではセリフ中に“レイブン”という言葉は登場せず、USNサイドでも最終ミッション直前に2回出るのみで、詳しいことは何も語られてないといっていい。機体数を推測する論拠に、アームの換装が容易なヴァンツァーにおいて内蔵火器や打撃機構など武装の種類を持ち出すことは望ましくない。従って、OCUサイドに現れたドリスコルのレイブンは上掲の6機以外の可能性すらあり、ここではこれ以上の言及は避ける。

ただし、1stのOCUサイドの最終ミッションに登場する、S型デバイス搭載レイブンは、ほかと事情が異なる。状況と時間軸を考えると、ロングリバース島での戦闘はウインガー拘束の後なので、ゲイルらの3機とは別物である。また、このレイブンも紛争後に破壊されたものであるので、ファイアバレーの確認する3機とは違う。劇中でキャニオンクロウが施設を爆破しているので回収は不可能と考え、一般にはその存在が明らかでない7機目が存在していたと考える。

最後に2ndのレイブンについて掘り下げてみるが、ここでひとつ問題がある。このレイブンは「ウインガーが強奪した3機の寄せ集めである」という記述がPS版1stの攻略本に書かれているのだが、この記事はリーザと接触したグライコフの証言との整合性が低い。

グライコフの証言(要旨)
「私はサカタインダストリィでこのレイブンを造った人間の一人。サカタインダストリィ事件が公表された後、最後に残ったレイブンを更に完成されたヴァンツァーとするために、私はこのレイブンと一緒にUSNに連れていかれた。しかし、私はレイブンを盗んで逃げ、OCUのある人物(チャンジャン将軍?)と接触した」

グライコフの話とファイアバレーの記述をまとめると「試作機4機のうち破壊を免れ最後に残ったレイブンは、2094年頃にレイブン製作者のひとりであるグライコフとともにUSNに回収され、ファイアバレーの研究所に預けられた。その後、グライコフはレイブンを研究所から持ち出し逃走。OCU軍情報部と接触し、2102年にアロルデシュでレイブンを同情報部員の手に委ねた」となる。すなわち、リーザの手に渡った1機は試作機であるということを意味する。

寄せ集め説に則って状況を想像してみると、USN軍情報部が駆けつけたサンタバーバラでレイブンは回収され、ファイバレーに預けられたということになり、レイブンは事件発覚(2094年)前、すでにUSNが保有していたことになる。しかし、グライコフは「レイブンと一緒にUSNへ連れて来られた」と言っているので、紛争後数年間はUSN国外の何者か(おそらくサカタ社)が保管していたとせざるを得ない。また、2ndのレイブンが寄せ集めの機体ならば、ファイバレーの記事で「(破壊されず)最後に残った1機」という言い回しにしない。以上のような理由で寄せ集め説にはかなりの疑念が残る。

結論。先に示した6機にS型BD搭載レイブン1機、2102年の時点で現存していた1機を加え、最低でも8機のレイブンが製造された。以上をまとめたものが上掲の概略図になる。


(付録)
このページのタイトルを「出て来い!レイブン中隊!!」としたのには訳がある。「付録」といいつつ、ここからが本題で、いままでのは前フリ。

1stUSNサイド最終ミッションで苦戦する方はほとんどいないと思う。それはレイブンが、わずか3機しかいないからにほかならない。私も例外でなく「3機じゃ物足りない!」と思ったわけである。そこでブーブー言ってもはじまらないので、レイブンを瞬殺し、考えた。なぜ、ここまで極端に難易度の低いミッションにしたのか。

ひとつに、演出の方法としては疑問は残るが、「これで終わりじゃない。4thに続くんだ」という余韻を残すために、意図的に最後のドキドキ感や達成感を排除させたのかもしれない。そして、もうひとつ「レイブンをたくさん出せない=3機しか出せない」理由があった。それは、PS版1stより遥か以前に発売された2ndのネットワーク上で「レイブンは4機しか造られていない」といってしまった手前、それに準じた機体数に押さえなければならない、と判断したからではなかろうか。つまり、試作機4機のうち、3機はニルバーナからウインガーに強奪され、洋上で破壊されたが、残骸から使える部品を拾い集めて1機を何とか形にして復活でき、それが回りまわってリーザのところに回ってきたとし、残り1機はOCUサイドの最終ミッションでドリスコルが乗っていた機体と設定していた(最上段の図でいうと、右4つの列に相当)。

ただし前述の通り、寄せ集め説を立てればグライコフの証言が成り立たないし、ファイアバレーの「紛争中」という記述とレイブン3機が撃破されたタイミング「紛争後」が食い違ってしまう。時すでに遅しであるが、「試作機」と限定しているネットワークの情報を逆手にとって「試作機開発は終了し、すでに量産が始まっていた」とか、ニルバーナ機関の機密性ゆえにレイブンの正確な数は掴めておらず、「実は4機のほかにも…」とすれば、2ndの設定に関係なくレイブンの数を増やせたはずである。

もう少し骨のある最終ミッションにするため、中隊規模のレイブン部隊が登場すれば、クライマックスのインパクトとしても申し分なかっただろう。よって、出て来い!レイブン中隊!!