金原子核線反応は無限の可能性を人類にもたらす理論だ。最大の利点は生み出される莫大なエネルギーであり、そのエネルギー発生論理は核融合、すなわち現存する自然科学の理論を上回る。人類が神の領域に踏み込まんばかりの力を得たといえよう。その圧倒的なエネルギー量は、地球上のエネルギー問題をすべて解決し、化石燃料どころかすべてのエネルギー循環の根本である太陽光にすら依存する必要性を失わせるのである。また、物質を完全消滅させてしまう性質から、さまざまな不要物質、つまりゴミ問題が解決する。このゴミとは家庭排出のみならず産業廃棄物、ひいては放射能によって汚染された物質などの危険物質の処理すら解決するのだ。
しかし、人類が核分裂を手に入れた時と同じ不安を私たちは禁じ得ない。その巨大なエネルギーは、当然軍事的な利用が可能なのである。それは人類史上類を見ない、破天荒な兵器の誕生を呼び込むに違いないからだ。また、新たに手に入れた神に迫る力は、現在の自然界が持つエネルギーの循環をも崩壊させてしまう可能性を持つ。もしすべての物質をエネルギーへと変化し、浪費させ続けたならば、その後に残る世界はどのようなものなのだろうか。人類は改めて、高い英知とモラルをもって未来を見据えなくてはならない時代を迎えたのかもしれない。 |

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